ラストワンマイルと倉庫の接点から見えてくる、物流業界の魅力について【第2回】100年先のデファクト・スタンダードを作る

LexxPluss
Nov 22, 2021

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207株式会社代表の高柳 慎也氏、Logistics Innovation Fund(以下LIF)の岡 洋氏をお迎えしてお送りする今回の対談、第2回は物流業界の未来予想からエンジニアが働きやすい組織づくりまで幅広く語った。

第1回:「非言語領域にこそ答えはある」はこちら(リンク

スタートアップが標準化へのシフトを先導する

植木:
前回までは物流現場やお二人の経験談などをお伺いしましたが、今後の物流業界に話を移したいと思います。最初に岡さんにお伺いしますが、物流業界、広く言えばインフラ業界は今後どのように変わっていくとお考えですか。

岡:
これは日本社会全体ですが、人口減少と高齢化が進み、働き手がどんどんいなくなる。特に物流領域は、需要が爆発的に増えているので、一番ひずみが大きくなるところだと危惧していて、個社最適のままでは解決は無理だと思っています。そこを、スタートアップが網の目の間を縫うような形で改善していくと思っています。

物流現場は皆さんそれぞれのノウハウで属人的にオペレーションしているんですけど、LexxPlussのロボットを使うと属人的な工程間搬送が標準化されて、各社で統一化される。207のクラウドを使うと、ラストワンマイル配送が誰でも同じ水準でできるようになる。このようにスタートアップがデファクト・スタンダードを担うと考えています。弊社のファンドはそういったスタートアップに投資したいと常々思っています。

この辺りは多分植木くんも考えがあると思うけど、ありますか。

植木:
そうですね。基本的には同じ考えですが、両社とも標準化を推進している観点は物流業界において極めて重要だと思います。例えば同じ目的地なのに違う物流会社が運ぶような非効率な事象が発生してしまうので、基本的には物流会社の壁を取っ払った最適なリソース配分や、物流業界外のリソース活用の2つが今後起きる重要な流れで、標準化はその必要条件だと認識しています。

LexxPlussは、物流ロボットの導入によって結果的に各社のオペレーションを標準化していますし、207のスキマ便は、特定の配達員しか持っていない経験知を形式知化することで、ギグワーカーによる同水準での配送を実現しています。このように、両社とも標準化を通じて、人手不足という物流業界の本丸の課題を解決している会社だと思います。

Logistics Innovation Fund 植木 修造氏

岡:
スタートアップがデファクトを担うという意味では、稀有な業界ですよね。倉庫内の工程間搬送のオペレーションは、LexxPlussのロボットを使うことが標準になり、ラストワンマイルのクラウドシステムからスキマ便への接続も207が標準になる。20年後や30年後、物流業界でお二人はもう、神のように崇め奉られるような、そんな気がします、本当に。

一同:(笑)。

岡:
冗談抜きで思っています。

植木:
そうですね。両社それぞれ違う領域ですが、この業界のスタンダードになってほしいと心から思います。

「顧客ファースト」から「顧客課題ファースト」へ

植木:
阿蘓さんに質問ですが、物流業界に大きな変革が起きている中、LexxPlussは「持続可能な産業と持続可能な生活」をビジョンに事業を推進されています。物流倉庫領域の内でも外でも、どのような価値を中長期的に提供したいか、どのような姿を目指しているか、教えていただければと思います。

阿蘓:
はい。LexxPlussにはロボットという単語が企業のカルチャーとかビジョンには全くないのが特徴です。「持続可能な産業と持続可能な生活を」ってちょっと普遍的なビジョンですけど、ロボットを作りたいから作ってる会社というよりは、どういう課題があってそれを僕らの特技とか得意分野でどう解決できるかっていう、「顧客ファースト」ではなく「顧客課題ファースト」を徹底している会社ではありますね。

物流倉庫の話でいうと、確か現在倉庫業で働いてる人材からプラス50%ぐらい今後人手が必要だという統計もあるぐらい、人手不足がダイレクトに直面するような産業なので、我々が付加価値が提供できるようになれば、物流倉庫業がどう効率的にこの物をお客様に届けるかっていう、よりクリエイティブな仕事に変わっていくと思うんです。

物をAからBに移すような単純作業するところはできるだけシステムに任して、例えばどう最短時間でラッピングをしたり、お客さん向けにカスタマイズをして提供するっていう、付加価値をのせていくプロフィットセンターを目指すべきだと思っています。

僕らは、複雑なハードウェアや自動化の制御ロジックを作れるところが得意分野ではあるので、そこを武器にどの課題を解決していくべきか、っていう観点で考えていくと、もちろん今は倉庫領域ですが、じゃあそこが解決したら持続可能な産業は作れますかっていうとそうではないので。そういう視点でものづくりをやっていきたいなというふうに思いますね。

植木:
高柳さんはいかがですか。207が目指す姿や、中長期的にLexxPlussのような企業とコラボレーションする必要性などをお伺いできればと思います。

高柳:
はい。長期的には僕は世界中いつでもどこでも物が届く、そういう四次元ポケット的なSF的な発想なんですけど、そういうことがやりたいんです。それにはまず、一番末端の受け取りユーザーにふれるポイントのラストワンマイル領域を起点としてやっていこうと思ってます。中長期みたいな観点でいくとラストワンマイル領域だけじゃその世界は実現できないので、LexxPlussさんしかり、いろんなプレイヤーとコラボしていくっていうのが重要になってくると思ってますね。

短中期の話でいくと、大きくは二つやりたいことがあって、一つ目が物流のラストワンマイル領域のデファクトを作るところです。例えば不必要なピンポン押しや、バラバラにヤマトさん、佐川さん、郵政さんが個別で荷物を運んでいるところなど、誰が見たって無駄だねという観点がたくさんあります。40年前とかは、元々それが個社のビジネスモデルだし、競合優位性になったのでよかったんですが。感情論があってあまり歩み寄れないところがあるものの、新しいデファクトを我々から提案していきたいところが一つ目ですね。

二つ目は未来につなげるデータ基盤を作りたいなと思っています。「TODOCU 」というソリューションを提供していますが、「TODOCU」がデファクトになったときに今は人を使って配送を効率化しています。人に合わせたインターフェースで在宅がわかるとか、不在がわかるとか最適なルートがわかるんですけど、将来的にロボットが入って来たときにも必要なデータになってくると思っていて。そういうデファクトのデータ基盤を作って未来につなげることを2つ目としてやりたいと思っていますね。

株式会社207代表 高柳 慎也氏

植木:
なるほど。ぜひ207のデータに基づきLexxPlussのロボットが動く世界が来ればいいな、と思いますね。

阿蘓:
例えばトラックが来たときにロボットで集荷してほしいニーズは明確にエンドユーザーとしてはあるので、本当に実現すべき未来だと思います。

岡:
LIFから出資しているオープンロジも同じく倉庫領域に特化していて、いかに物のデータを川上から取れるかに腐心しています。荷物が倉庫に来る前から、サイズや状態を把握しようとしていて、こういったものが倉庫内に運ばれる際には、同じIDやデータがLexxPlussのロボットに共有される、そういう世界が来るんだろうなって思っています。

Logistics Innovation Fund 代表パートナー 岡 洋氏

植木:
改めて、両社とも物流領域で事業を推進するスタートアップということで、物流スタートアップで働く魅力についてお伺いさせてください。

今度は高柳さんに先にお伺いします。現在20名強のメンバーがいらっしゃいますが、物流という魅力を伝えるのがやや難しい業界である中で、どのように今のメンバーを集めたか、集めるにあたり苦労したポイントを教えていただければと思います。

高柳:
そうですね。振り返れば20名強になっていたみたいな感覚ではあるんですが、最初は今まで一緒に働いたことがあって信頼できる方みたいなところをベースに仲間集めをしましたね。苦労したことでいくと、物流の泥臭いものをいかに面白いものと見せるかみたいなところは今も試行錯誤しながらやっている感じはあるかもしれないです。インフラ的な側面があるので、ちゃんと社会実装できればものすごいインパクトになるので、工夫のしがいがあるなとは思っていますね。

植木:
阿蘓さんはいかがですか。阿蘓さんの場合だと、Deep4Driveのつながりがあると思いますが、ここまでのメンバー集めにあたり苦労した点や、どのような要素を重視して仲間を集めてきたか、について教えていただければと思います。

阿蘓:
はい。ずっと苦労はしているんですけど、ハードウェアなので製品自体を作るまで時間がかかるので、まだ目の前に物がない状態でどう僕らがやりたいこと・作りたいものを語って、転職を考えている人に魅力を伝えるか、そこは苦労したと思います。

どういう方が向いているかでいうと、共通点はあると思っていて、ものづくりをしたくて大企業に行ったんだけれども、本質から少しずれたところで一つの歯車としてエンジニアの作業をやっている人。でも、本当はやりたいこと・使命感は別にあって、企業という枠に捉われずに自らの手でものづくりするモチベーション高い方かなと思います。高柳さんも仰ってましたが、物流って決して華やかに見える業界ではないんですけれど、いかにして産業にインパクト与えるかとかに胸躍るようなエンジニアが本当の意味で顧客課題ファーストを実現できると思っています。

責任分担とフラットな組織

植木:
ありがとうございます。参画いただいたエンジニアメンバーに、日々パフォーマンスを発揮してもらう上で、意識しているポイントがあればぜひ教えていただければと思います。

阿蘓:
そうですね。役割分担ではなく責任分担で組織を作っているところが一番大きいのかなと思います。

前職は大企業だったので、その時の経験から強い組織・弱い組織って何かなと考えたところ、僕の結論として、責任分担がそもそもできてない組織はそもそも駄目だなと。役割分担はできているかもしれませんが。責任分担してないと何か起きたときに、結局誰の責任だっていう話になって、結局誰も決断できず、クイックに動けないという流れを生むので。

エンジニアはそれぞれの専門性・知見のもとに、毎日開発をしてると思うんですけど、僕としては積極的に「開発の決定事項はもう任せる。僕はもう承認するだけ」のような形で、できるだけ責任を一人一人につけて、一人一人の判断でじゃあ本当に課題にあった製品なのかを個人個人で考えるような環境を作るというところが一番意識してるところなのかなと思いますね。

LexxPluss代表 阿蘓 将也

植木:
プロダクト開発が重要なのは207も変わらないと思いますが、今の阿蘓さんの話を受けて、似ている点・異なる点があれば教えていただければ。

高柳:
そうですね。責任みたいなところでいうと、我々も似たようなところはあるんですが、そこまで明確に責任分担をやれてるかっていうとやれてないかもなと思いましたね。一方で、積極的な権限委譲みたいなところはやれているかなと思っていますね。権限委譲するとその責任も移行できるので、明確に権限委譲した方には責任が移行してるんだなというふうには思ってます。その文脈で行くとあんまり大きな違いはないかもしれないなとは思ってます。すごい意識しているわけではないので気付きでした。

岡:
お二人ともマネジメントとしては比較的フラットで、周りにお任せするタイプだと思っていますが、意識してやっていますか?創業期って「ガッと社長がドライブ」みたいな印象があるじゃないですか。

阿蘓:
創業してまだ2年目で創業スタイルを語れる立場ではないんですけど、そうですね。最近、自分自身が哲学的な話を多くするようになった気付きがあって、要するに本質的なところにどれだけ執着できるに僕は常にコミットしています。技術的に何がいいとか、プロダクトどうすればいいとかって意見は全部フラットにしないと僕の意見が変にスパッと通って進んでしまうと元も子もないので。

岡:
高柳さんは意識していますか。フラットな組織。

高柳:
そうですね。いや、そこまで意識してないかもしれないですね。

岡:
してないんだ(笑)。

高柳:
してないけど、元々めちゃくちゃフラットだったんですよね。僕も横に並んでるぐらいな感覚ではあったんですけど、最近CTOやCFO候補の方が入ってきたりするので、僕よりもテクノロジーわかるしファイナンスわかるしコーポレートわかるしみたいな方がすごい増えてきたので、逆に僕がマネージできることってないんですよね。なので、その方たちに信頼してお任せしています。

MVVに立脚できるか

植木:
ちょうどCTOの話も出たので次の話に進みたいと思います。207もLexxPlussも創業期からCTOにあたる方がいらっしゃいますが、CEOとCTOがお互い一緒に働く上で、大事にしている点があればぜひ教えていただければと思います。

高柳:
ありがとうございます。前提としてもう全てお任せしていますが、二つだけ大事にしている点があります。一つ目が僕もある程度、概要は理解するところは意識していますね。要は全部お任せするっていうのはもちろんするんですけど、丸投げでは駄目だと思ってるんですね。僕自身もある程度の理解はした上でお任せするっていうのは一つ意識していますね。

もう一つの観点でいうと、会社のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)から逸れてないかは常にフィードバックするようにしています。逆に細かいところは全然見れないときもあるので。

植木:
ありがとうございます。阿蘓さんはいかがですか。207と違いがあるのか、それとも似たような点に気をつけていらっしゃるのかなど、お伺いできればと思います。

阿蘓:
LexxPlussの場合は取締役がCTOっていう肩書ではないんですけれども、共通点で同じだなと思ったのが、やっぱりMVVのずれは顧客への提供価値のずれにも繋がりますし。私自身が今コーディングしてるわけではないので、第三者的に見て同じようにフィードバックしています。

一方で、僕らMVVと同じレイヤーでクオリティ(品質保証)をあげていて、ハードウェア作る会社なので品質保証が組織として機能しているか、技術開発で品質に関して議論ができてるかをしっかり見れる組織に変えようとしています。

僕自身、自動運転は研究開発してたんですけど、ハードウェア量産を何万台・何百万台と経験したわけではなく、そういう意味で、取締役で入っていただいた方はドローンの自動運転ビジネスを創業期から量産のフェーズまで全て経験していて、僕がカバーできないわからない部分にも、彼の意見や経験をフルで取り込めているところが、ハードウェアビジネス故だとは思いますが違う点かなと思いました。

岡:
量産化を見れる役員が必要というのは、以前から思っていたんですか。

阿蘓:
思ってました。良いもの作ると、良いものを作れるかどうかって製品の理想像とは全然別の作用が働くというか、前々からそういう人材って本当に少ないっていうのがわかってて、大企業で品質管理とか製造管理とかやってるエンジニアはいるものの、もうその枠組みで固定されているので、全体像を見れる人は少ないんですよね。

スタートアップでゼロから量産まで立ち上げてある程度成功した会社でないと0から10全部見れてるエンジニアにいなくて、日本だと本当に限定的な印象がありました。前々からずっと探していて、ご縁あって入社いただきました。こればっかりは運ですね。

岡:
素晴らしいですね。

100年先のデファクト・スタンダードを作る

植木:
最後に、物流業界やそれぞれの会社で働く魅力、今後会社に入られる方へのメッセージをいただければと思います。高柳さんからお願いします。

高柳:
はい。物流領域ってインフラみたいなところがあって、そのインフラも結構老朽化してきていると思ってるんですよね。だからこそ課題もあって、その課題を解決することによって、次のデファクトになれると思っていて、そのデファクトになると100年ぐらいは少なくてもデファクトで居続けられるんじゃないかなと思ってるんですね。自分が作り上げたプロダクトが社会を支えているっていう感覚を得られるところが一番セールスポイント、魅力だと思ってるので、興味がある方、ぜひご一緒したいなと思ってます。

植木:
ありがとうございます。阿蘓さんいかがですか。

阿蘓:
ありがとうございます。同じように物流領域ってよくよく見てみると、すごく社会に密接していて、かつ先ほど高柳さんが言ったように老朽化しているシステムがある中でそれを使い続けてる、なんとかやってる業界です。それをどう未来志向に本当に持続可能なものにしていくかってところは、社会課題を解決してるっていう実感はあるのかなと思います。

また、僕らは創業期からグローバルでものを売るっていう前提で考えていて、スタートアップとしては重い投資が頻繁に発生したりとか、なかなかスケールしにくいビジネスだというところは一定課題としてはありつつも、スケールしたときのインパクトは日本だけではなく海外でも可能性がある話ですし、それを実現するために動いている会社ではあるので、スケール感は一つの魅力にはなるのかなと思います。その規模でものづくりしてみたいとか、社会にインパクト与えたいとか、そこに興味があるみたいな人がいれば、ぜひ一緒に働けたらなっていうふうに思います。

植木:
皆さん本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!

皆さん良い笑顔!

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Japan-based startup working on the next generation of human-centric autonomous robot for warehouses and factories / https://lexxpluss.com/

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